◆literature

詩、小説、その他文章系産物。

◆銀河鉄道


 気づけば車両にひとりきりになっていた。

 最近は講習のために帰りが遅くなっていたが、さすがに車両にひとりきりになったのは初めてで、すこし怖いようなわくわくするような取り残されてしまったような、何とも言えない気持ちになる。

 窓の外はもちろん真っ暗で、車内が窓ガラスに反射していて外の景色はよく見えない。これで電気が全部消えたら宇宙の中を走っているようで楽しいかも知れない、などと柄にもないことを思う。実際にそんなことになったら悲鳴をあげて怖がるに決まっているのに。


無機質な光の中で、ipodにイヤホンを挿す。そしてこんな夜にとびきり合った、ふわふわと異世界に運んでくれそうな曲を選ぶ。電車のガタゴトという音が遠くなり、アナウンスも聞こえない。ゆらりゆらりと体だけが揺られて、精神が浮遊するようだ。ゆっくりと目をつむってみる。



この電車は、夜の真ん中を走る、ひとりぼっちの銀河鉄道だ。


◆チュッパチャプス


死んだように目を閉じる彼女が咥えている飴の棒だけが時折左右に揺れて、彼女が生きていると示していた。


おもむろに彼女の手が持ち上がり、飴の棒を口から抜き取る。

その瞬間にさりげなく棒の先の飴の玉を唇で吸った仕草が、なにやら妙に色っぽくて僕は思わず目を逸らしてしまった。


濡れた甘い玉に眩しい夕日が反射して、まるで彼女が太陽を食べようとしているようだ。


◆無題


夕闇を走っていた 狐火から逃れて

陽が落ちる黄昏 君の声はもうない


そうだ 君はもういないのだ


声は死んだのだ 息を殺したのだ

気は沈んだのだ 狐火から逃れて



闇夜が迫っていた 蛍火を追いかけて

月が陰る丑三つ 僕の目はもう開かない


そうか 僕はひとりなのか


瞳は消えたのか 目は眩んだのか

心は死んだのか 蛍火を追いかけて


・・・


もう 君はいないので

もう 僕はひとりなので

もう なにもないので


河鹿が夏を呼ぶのは

漣が揺れているのは

光がさんざめくのは

花火が鳴り響くのは


みんな君のせいなのだ

みんな君のせいなのだ

もう 僕はいないのだ



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